大家にもマーケティングが必要 物件の強みを活かす市場調査と競合調査

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「マーケティング」と聞くと、大企業の話だと感じる方もいるかもしれません。しかし、入居者に選ばれる立場の大家にとっても、マーケティングの視点は欠かせません。この記事では、大家が取り組みたい調査の方法、入居者層の決め方、募集の見せ方、空室対策の打ち手の整理までを解説します。

マーケティングとは「選ばれるための仕組みづくり」

マーケティングという言葉を簡単に言い表すと、「売れるための仕組みづくり」です。市場調査や競合調査を行い、自分の商品をどのように届けていくかを考える活動を指します。

賃貸経営に置き換えると、次のようになります。

  • 自分の物件の強みは何かを知る
  • その強みを、どんな入居者に、どのように伝えるかを考える
  • 入居者に選ばれるための対策を打つ

大家も、入居者に選ばれる立場の「事業者」です。マーケティングの視点は、満室経営に直結します。

マーケティングの考え方は変わってきている

日本マーケティング協会は2024年に、マーケティングの定義を新しくしました。大まかにいうと、売り手が市場をつくる活動という捉え方から、企業・顧客・社会が一緒に「価値をつくる」活動であり、関係者との関係性を育てていくもの、という捉え方へと変わっています。

少し難しく聞こえますが、賃貸経営に当てはめれば、「入居者にとっての価値を一緒につくっていく」という考え方です。入居者が長く快適に住める物件にすることが、結果として大家の収益にもつながります。

大家が取り組みたい市場調査と競合調査

具体的には、次のような調査から始めるとよいでしょう。

  • 市場調査:エリアの入居者層(単身・ファミリー・学生など)、需要の動き、家賃相場
  • 競合調査:周辺の似た物件の家賃、設備、空室状況、募集条件
  • 自分の物件の分析:立地・間取り・設備・家賃の強みと弱み

調査の結果をもとに、強みを伝える募集の仕方を考えたり、弱みを補う設備や条件を検討したりします。

相場はポータルサイトで「条件をそろえて」比べる

家賃相場を調べるときは、賃貸ポータルサイトで、自分の物件と条件が近い物件を探して比べるのが基本です。

  • 築年数と構造(木造・鉄骨・RCなど)
  • 駅からの距離
  • 間取りと広さ
  • 階数や向き

条件をそろえずに「このエリアの平均家賃」だけを見ても、自分の物件の適正な家賃は分かりません。条件をそろえて比べることで、募集家賃が高すぎるのか、むしろ上げる余地があるのかが見えてきます。物価や建築費が上がるなかで、都市部を中心に家賃が上がっているエリアもあります。調査は一度きりではなく、定期的に行いたいところです。

「誰に貸すか」を決めると打ち手が変わる

マーケティングでは、「誰に選んでほしいか」を決めることが出発点になります。入居者層によって、響く設備や条件が変わるからです。

  • 単身者・学生:インターネット無料、家具・家電付きなど、初期費用や手間を抑える工夫
  • ファミリー:駐車場、収納、防犯設備、子育てしやすい周辺環境の発信
  • 入居条件の拡大:ペット可、外国籍の方、高齢の単身者などの受け入れ

たとえば家具・家電付きのプランは、初期費用を抑えたい単身者や外国籍の入居者に向けて有効な場合があります。その際、家具・家電を部屋の「設備」にすると故障時の修理が大家の負担になるため、入居者への「プレゼント」として扱う方法もあります。どの形がよいかは、管理会社と相談して決めましょう。

募集の「見せ方」も大切

物件の魅力が伝わらなければ、問い合わせにはつながりません。募集図面やポータルサイトの写真、設備の記載は、入居者が最初に目にする「お店の顔」です。

その一つの方法が、家具や小物を置いて部屋の暮らしをイメージしやすくする「ステージング」です。最近は、写真の上に家具を合成するデジタルのステージングもあります。ただし、ネット上の写真だけをきれいに見せると、内見に来た人が何もない部屋を見て「写真と違う」と感じてしまうことがあります。内見前より内見後のほうが良い印象になる部屋は決まりやすく、その逆は決まりにくいものです。見せ方は、写真と現地の印象がそろっているかまで含めて考えることが大切です。

空室対策の打ち手を棚卸しする

空室を埋めるための手段は、一つではありません。マーケティングの視点で、使える打ち手を棚卸ししておくと、状況に合わせて組み合わせやすくなります。

  • 条件面:募集家賃、敷金・礼金などの初期費用、フリーレント
  • 仲介会社への働きかけ:物件資料の配布、仲介会社への訪問、広告料(AD)の設定
  • 物件そのもの:設備の追加、リフォーム、清掃や共用部の印象改善
  • 見せ方:写真の撮り直し、ステージング、募集文の見直し

名取もこれまで、条件面の調整や、仲介会社への資料送付、自分の足で回る営業など、さまざまな空室対策に取り組んできました。大切なのは、一つの手段にこだわらず、調査の結果から「今この物件に効く手」を選ぶことです。

入居者の声を、次の価値づくりに生かす

新しいマーケティングの考え方では、顧客と一緒に価値をつくることが重視されています。賃貸経営でいえば、入居者や入居希望者の声を、次の改善に生かすことです。

  • 内見したのに申し込まなかった理由を、仲介会社に聞いてみる
  • 退去する入居者に、差し支えない範囲で退去の理由を聞いてみる
  • 入居者向けの調査で人気の設備(インターネット無料など)の動向を追う

こうした声は、管理会社や仲介会社を通して集めることが多いはずです。日頃から「何か気づいたことがあれば教えてください」と伝えておくと、現場の情報が集まりやすくなります。入居者の不満を一つずつ減らしていくことが、長く住んでもらえる物件づくりにつながります。

マーケティングは物件を買う前から始まる

マーケティングは、物件を買った後だけの話ではありません。むしろ、物件を選ぶ段階から始まっています。

そのエリアにどんな入居者がいて、どんな部屋が求められているのか。周辺に競合物件はどのくらいあり、どんな条件で募集されているのか。購入前にこうした調査をしておけば、買った後に「思ったより決まらない」という事態を避けやすくなります。物件の利回りや価格だけでなく、「この物件は誰に選ばれるのか」を考えてから購入を判断することが大切です。

「誰もやっていないこと」で一人勝ちを狙うリスク

中には、誰もやっていない場所で、誰もやっていない事業をして一人勝ちしたい、と考える方もいます。うまくいけば大きな成果につながる可能性はあります。

ただし、誰もやっていないことには理由がある場合もあります。

  • すでに大手が取り組んだものの、うまくいかずに撤退している
  • そもそも、そのエリアにその需要がない

こうしたリスクがあるため、新しい取り組みに挑むときほど、事前のリサーチが大切です。

小さく試して、結果を見る

マーケティングの打ち手は、やってみなければ効果が分からないものも多くあります。だからこそ、いきなり大きな投資をするのではなく、小さく試して結果を見ることが大切です。

たとえば、募集写真を撮り直したら問い合わせが増えたか、初期費用を下げたら内見が増えたか、といった変化を、管理会社から数字で教えてもらいましょう。効果が出た打ち手は続け、出なかった打ち手は見直す。この繰り返しで、その物件に合ったやり方が少しずつ見えてきます。

価値をつくれば、家賃の「根拠」になる

マーケティングで入居者にとっての価値を高めることは、家賃を見直すときの根拠にもなります。リフォーム費用や金利、共用部の電気代など、大家の側のコストも上がっています。家賃を上げたいときは、相場のデータに加えて、設備の改善など「入居者にとって何が良くなったか」を示せると、話を進めやすくなります。

選ばれる理由をつくり、それをきちんと伝え、価値に見合った家賃をいただく。この流れを回し続けることが、大家のマーケティングです。

まとめ

  • マーケティングとは、入居者に選ばれるための仕組みづくりのこと
  • 考え方は、顧客や社会と一緒に価値をつくる方向へと変わってきている
  • 相場はポータルサイトで条件をそろえて比べ、定期的に見直す
  • 「誰に貸すか」を決めると、効く設備や募集条件が見えてくる
  • 写真と現地の印象をそろえるなど、募集の見せ方も工夫する
  • 誰もやっていないことに挑むときほど、需要や先行事例を事前によく調べる

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