「RC>鉄骨>木造」は過去のルールになりつつある
少し前まで、金融機関の融資姿勢には明確な序列がありました。「RC>鉄骨>木造」というルールです。
木造アパートには「法定耐用年数が短く、融資がつきにくい」「火災に弱く、防音性に欠ける」というネガティブなイメージが先行し、投資家からも敬遠されがちでした。
ところが最近、銀行の担当者と話をしていると「木造でも問題ありません」「むしろ木造のほうが評価しやすいです」という言葉を耳にする機会が増えています。投資家がこぞって新築木造を建てるという、かつては考えられなかった逆転現象まで起きています。
なぜ銀行は、ここまで木造アパートを評価するようになったのでしょうか。
銀行が見ているのは構造の種別そのものではない
まず大前提として押さえておきたいのは、銀行が融資判断でもっとも重視しているのは構造の種別ではない、という点です。見ているのは次のような「事業の安定性」です。
- 長期的に収益を生み続けられるか
- 担保価値が安定しているか
- 将来の修繕やリスクが読めるか
RCか木造かという分類は、これらを判断するための材料のひとつにすぎません。木造が評価されるようになったのは、木造建築の構造・性能・法規がここ10〜20年で大きく進化し、上の3点を満たせる物件が増えたからだと考えられます。
木造が嫌われていた理由は「法定耐用年数22年」
かつて木造が嫌われていた理由はシンプルでした。税務上の法定耐用年数が22年と短く、それが融資期間の限界とみなされていたからです。融資期間が短ければ毎月の返済額が重くなり、キャッシュフローが残りにくくなります。
劣化対策等級3で評価寿命が延びる
現代の木造住宅は、特定の認定を取得することで、物件の評価寿命を大きく延ばせます。代表的なのが「劣化対策等級3(最高等級)」の取得です。
この等級を取得した木造物件は、構造躯体が3世代(約75〜90年)にわたって維持されると評価されます。その結果、多くの地方銀行や信用金庫が30〜35年の長期融資を組むようになりました。
融資期間が伸びれば毎月の返済額が下がり、キャッシュフローを最大化しやすくなります。銀行が木造を好むようになった最大の理由は、まさにこの「融資期間の伸長」にあります。
耐火性能も昔の木造とは別物
「木造は火事に弱い」というのは、もはや過去の常識といってよい状況です。最近の木造アパートの多くは、準耐火構造または省令準耐火構造で建てられています。柱や梁を石膏ボードなどで被覆し、延焼を防ぐ区画設計を施すことで、一定時間にわたって構造体が燃え落ちないようにした構造です。
ここで知っておきたいのが、木材の「炭化層」という特性です。木材は一定の厚みがあると、表面が炭化し、その層が断熱材の役割を果たして内部まで火が回るのを遅らせます。一方、鉄は高温になると一気に強度を失います。
火災時に重要なのは「燃えないこと」そのものではなく、「すぐに全体へ火がまわらないこと」「倒壊しないこと」です。その観点では、木造は優位な特性を持っています。この性質は建築学的にも明確に示されており、銀行や保険会社もすでに評価基準に織り込んでいます。
さらに近年は、都市部の防火地域でも建築できる「1時間耐火構造」の3階建て木造アパートも増えています。2025年の建築基準法改正(いわゆる4号特例の縮小)を見据え、木造でもより厳密な構造計算が求められるようになっていて、これも木造の信頼性を高める方向に働いています。
新築RCは建築コストが重い
木造が選ばれる背景には、新築RCの事情もあります。コンクリートや鉄筋の価格高騰、職人不足により、RCの坪単価は木造の1.5〜2倍に達することもあります。そのぶん利回りが出にくく、投資対象としては年々厳しくなっています。
「銀行評価」と「利回り」の両面から見て、新築木造が選ばれやすい環境になっているわけです。
それでも法定耐用年数ではRCが強い
とはいえ、木造がすべての面でRCに並んだわけではありません。法定耐用年数だけを見れば、まだまだRCが強いのが実情です。
木造が評価される時代に入りつつあるものの、RCの強みも残っている。いまは、その両方が混在する「端境期」にいるのかもしれません。重要なのは、世間のイメージではなく、自分が買おうとしている物件が銀行にどう評価されるのかを確認することです。
木造アパートを検討するときの視点
実際に木造の購入や新築を検討する場合は、次の点を意識するとよいでしょう。
- 劣化対策等級3などの認定を取得できるか(評価寿命と融資期間に直結する)
- 準耐火構造・省令準耐火構造など、耐火性能がどの水準か
- 建築コストを含めた総額で、利回りとキャッシュフローが成り立つか
- 取引を検討している金融機関が、木造にどのような融資期間を出すのか
銀行の姿勢は金融機関ごと、時期ごとに変わります。「木造だから無理」と最初から決めつけず、複数の金融機関に打診して評価を確かめることが大切です。
まとめ
- 銀行が融資判断で重視するのは、構造の種別ではなく「長期的な収益」「担保価値の安定」「将来のリスクが読めること」である
- 木造が敬遠されていた最大の理由は、法定耐用年数22年が融資期間の限界とみなされていたことだった
- 劣化対策等級3を取得した木造は、構造躯体が約75〜90年維持されると評価され、30〜35年の長期融資が組まれるケースが増えた
- 準耐火構造・省令準耐火構造、炭化層の特性などにより、現代の木造は耐火面でも昔とは別物になっている
- 新築RCは建築コストが木造の1.5〜2倍になることもあり、利回りが出にくい。ただし法定耐用年数ではRCが依然として強く、いまは端境期にある
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