不動産投資を始める前は、大きな借金が怖いと感じるものです。「何かあったときの保険はないか」と考えたとき、候補に挙がりやすいのがサブリースです。この記事では、サブリースの仕組みと、サブリース付きの物件を購入するときに注意したい点、契約前に確認しておきたいことを解説します。
サブリースとは「一括借り上げ」の仕組み
サブリースとは、サブリース会社が大家から物件を一括で借り上げ、それを入居者に貸し出す仕組みです。「一括借り上げ」や「家賃保証」と呼ばれることもあります。
- 大家はサブリース会社に物件を貸し、サブリース会社から毎月決まった賃料を受け取る
- サブリース会社が入居者を募集し、入居者から家賃を受け取る
- 空室があっても、契約で決めた賃料が大家に支払われる
新築や築浅の物件を中心に、建築会社や販売会社がサブリースをセットにして販売するケースが多く見られます。空室の心配をしなくてよい点が、初心者にとって魅力に映ります。
ノンリコースローンという選択肢もあったが
借金への不安を和らげる仕組みとして、ノンリコースローンという融資もあります。返済の原資を、融資の対象となる物件の家賃収入に限る融資で、原則として物件以外の財産にまで返済義務が及ばないのが特徴です。
戦(SEN)代表講師の名取も、2007年に不動産投資を始める前に、ノンリコースローンを検討しました。しかし、こうした都合のよいローンは、借り手にかなり高い属性が求められたり、金利が高めだったりと、銀行の側にリスクがない組み立てになっています。今でも、個人の投資家が気軽に使えるものではありません。
そのため、「保証」という意味で普及しているのはサブリースのほうです。ただし、サブリースには注意すべき点がいくつもあります。
注意点1 手数料で収入が目減りする
サブリースの一番の注意点は、サブリース会社の取り分によって、大家の収入が目減りすることです。
たとえば、本来の満室家賃が月100万円の物件で、サブリース会社の取り分が20%の契約なら、大家に入るのは最大でも月80万円です。保証される賃料の割合は契約によって異なりますが、満室時と比べて1〜2割ほど低く設定されることが多いといわれます。
サブリース期間中は、空室があっても毎月80万円が入るので安心です。しかし、満室に近い状態を保てる物件であれば、自分で管理会社に任せて運営したほうが収入は多くなります。年間で見れば240万円、10年なら2,400万円の差です。安心の対価としては、決して小さくない金額です。
注意点2 保証賃料は下がることがある
「家賃保証」という言葉から、ずっと同じ賃料が入り続けると思いがちですが、実際にはそうとは限りません。
- 契約の中で、数年ごとに賃料を見直す条項が入っていることが多い
- 周辺の家賃相場が下がれば、サブリース会社から減額を求められることがある
- 一般的な賃貸借契約と同じく、借りている側(サブリース会社)には、法律上、賃料の減額を求める権利があるとされる
保証の期間が「30年」と書かれていても、その間の賃料が固定されているとは限らない点に注意が必要です。購入前には、賃料の見直しの時期と条件を契約書で必ず確認しましょう。
注意点3 解約が難しく、引き継ぎにも不安がある
サブリースの契約を、大家の側から解約するのは簡単ではありません。サブリース会社は物件の「借主」にあたるため、大家から契約を終わらせるには正当な理由が求められることがあります。契約書に解約の条件や違約金が定められている場合もあります。
また、解約できたとしても、その時点の本当の入居状況を引き継ぐことになります。
- 実際の入居者の家賃が、思っていたより安く設定されていた
- 満室だと思っていたら、実は空室が多かった
- 入居者の質や滞納の状況が分からない
しっかりしたサブリース会社であれば問題は起きにくいですが、そうでない場合は、引き継いだ後の運営に苦労することがあります。名取が個人的にサブリースをあまりおすすめしないのは、こうした理由からです。
サブリース付きの物件を買うときに確認したいこと
中古物件を購入するとき、すでにサブリース契約が付いていることがあります。この場合、買主はその契約を引き継ぐことになるのが一般的です。購入前に、次の点を確認しておきましょう。
- サブリース契約の契約書の内容(保証賃料、見直しの時期、解約の条件と違約金)
- サブリース会社が入居者から受け取っている実際の家賃と、入居状況
- サブリース会社の経営状態や、これまでの運営の実績
- サブリースを外した場合の収支(実際の家賃で運営したらどうなるか)
特に大切なのが、最後の「サブリースを外した場合の収支」です。表面上は保証賃料で利回りが計算されていても、サブリースが終わった後の実態の家賃で計算すると、収支が大きく変わることがあります。
銀行もサブリースの「中身」を見ている
融資の審査でも、サブリースが付いているから安心と評価されるとは限りません。銀行は、保証賃料がいつまで続くのか、サブリースが終わった後も物件が収益を生めるのかを見ています。
売却するときも同じです。買主が、サブリースの付いた収支ではなく、実際の入居状況や家賃をもとに物件を評価すれば、思ったほどの価格がつかないこともあります。物件の本当の実力を、自分の目で確かめておくことが大切です。
サブリース新法で知っておきたいこと
サブリースをめぐるトラブルが社会問題になったことを受けて、2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。いわゆるサブリース新法と呼ばれるものです。
- 将来の家賃の減額リスクなどを伝えずに、「家賃がずっと保証される」と誤解させるような勧誘は禁止されている
- サブリースの契約を結ぶ前に、契約の内容やリスクについて、書面で説明することが求められている
説明を受けるときは、「賃料はいつ、どのような条件で見直されるのか」「解約の条件はどうなっているのか」を具体的に質問しましょう。詳しい内容は、専門家に確認しながら判断してください。
サブリースに頼らない運営のために
サブリースの安心感の正体は、空室のリスクをサブリース会社に肩代わりしてもらうことです。その分の対価を払っているとも言えます。
一方で、賃貸需要のあるエリアで、適正な家賃設定の物件を選び、信頼できる管理会社と組んで運営すれば、サブリースに頼らなくても満室に近い状態を保つことは十分に可能です。空室リスクは、物件選びと運営の工夫で小さくできるものです。
管理会社への委託とは何が違うのか
サブリースとよく比べられるのが、管理会社に管理を委託する方法です。どちらも物件の運営を任せる点は同じですが、お金の流れとリスクの持ち方が違います。
- 管理委託:入居者との契約の当事者は大家。家賃は大家の収入になり、管理会社には家賃の数%程度の管理料を払う。空室のリスクは大家が持つ
- サブリース:入居者との契約の当事者はサブリース会社。大家はサブリース会社から決まった賃料を受け取る。空室のリスクはサブリース会社が持つ
管理委託は、空室のリスクを自分で持つ代わりに、満室にできれば収入が多くなります。サブリースは、空室のリスクを手放す代わりに、収入の上限が下がります。どちらが良いかは、物件の賃貸需要と、自分がどこまでリスクを取れるかで決まります。
サブリースが選択肢になるケース
サブリースがまったく役に立たないわけではありません。たとえば、次のような場合には、検討する余地があるかもしれません。
- 本業が忙しく、運営に関わる時間をほとんど取れない
- 物件が遠方にあり、信頼できる管理会社が見つからない
- 一定期間、収入を確実に固定しておきたい事情がある
ただし、その場合でも、保証賃料の見直しや解約の条件、サブリース会社の信用力は必ず確認しておきましょう。「安心」の中身を確かめずに契約するのが、一番のリスクです。
まとめ
- サブリースは、サブリース会社が物件を一括で借り上げ、決まった賃料を払う仕組み
- サブリース会社の取り分で、満室時と比べて収入が1〜2割ほど目減りすることが多い
- 保証賃料は見直されることがあり、ずっと同じ額が入るとは限らない
- 大家からの解約は簡単ではなく、解約後の入居状況の引き継ぎにも不安がある
- サブリース付きの物件は、サブリースを外した場合の収支を必ず計算する
- 契約の内容とリスクは書面で確認し、分からない点は専門家に相談する
レバレッジ型不動産投資を体系的に学びたい方へ

コメント